7人が本棚に入れています
本棚に追加
すると、彼女は僕の視線に気付いたのか、こちらに顔を向けた。僕は慌てて視線を逸らして、再び中庭の観葉植物を眺め始める。その間、彼女に僕の顔を凝視されているような気がしてならない。
「もしかして、勇君?」
「え?」
僕は突然に彼女に話し掛けられ、素っ頓狂な声を上げてしまった。そして僕は彼女を見るや否や、心臓が弾けるんじゃないかというくらいの衝撃を受けた。何しろ、知人の女性にすら話し掛けられる経験なんて殆どないのに、ましてや他人の女性に話し掛けられるなんて以っての外。
「ねぇ、勇君でしょ? 私の事、分かんないかなぁ~。ほら! 同じクラスの真実子だよ」
そんな事を言われても、僕は同じクラスの女子の顔なんてあまり覚えてはいない。僕には小夜子がいたから、他の女性なんて全く眼中には無かったんだ。
「ごめん……分かんない」
「はぁ~、残念。私、こう見えても勇君とは仲が良い部類に入ると思ってたんだけどなぁ」
仲が良いだって? そんなはずないよ。なんせ、僕は恋人以外の女性とは親しくなる気はないんだからね。まぁ、今は恋人なんていないんだけどさ……。
最初のコメントを投稿しよう!