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こはるとひよりは、本当にスクスクと育った。
半年ほど経った時、希望していた保育園に空きが出たと連絡が入った。
今日子は、もう少しゆっくりしたかったが、これを逃したら、またいつ保育園に入れるかわからないほど待機児童がいたので、割り切って職場復帰することにした。それに合わせて、今までペーパードライバーだったけど、車を運転することにした。自動車学校にペーパードライバーのための講習を申し込み、十五年振りにハンドルを握り、運転した。免許を取る時には感じなかった爽快な気持ちでいっぱいになった。
『もう一人じゃない。この子たちのために何とかしなきゃ…』
今日子は、自分の力を信じることが出来るようになった。不安がないと言えば嘘になる…でも、踏み出すから見えることもあるのかもしれない。そこにかけているのだった。
会社にも復帰することを連絡した。次の日に打ち合わせも兼ねて、子供を連れて、会社に顔を出した。みんなが温かく迎えてくれた。
今日子の仕事は、以前やっていたことに比べるとはるかに少なく、張り合いもないが、子育てや家事をしながらなら、ちょうどいいのかもしれないと思うことにした。
配慮をしてくれた会社に感謝した。
…ここで頑張ってきて、本当に良かった…
今日子は、心からそう思った。
打ち合わせを終えて、会社を出ると、日差しがやわらかく注いでいた。
今日子は、ベビーカーの中で眠ってしまった二人に話しかけた。
「ねぇ、お父さんはこんな優しい日差しに包まれたあなたたちを見て、名前をつけたのよ…」
今日子は、そこまで話して、小さい頃に聞いた自分の名前の意味を思い出した。
…人生は一日一日の積み重ねだから、毎日の出会いだったり、出来事をまっすぐに生きてもらいたい…
あのころは、何をまっすぐに生きるのかわからなくて、苦しかった。今ならほんの少しだけわかった気がする。
まっすぐに生きるって意外と難しいのを知っていたから、母は私の名前に願いとして込めたのかもしれない。
そんなことを考えながら、子供たちが寝ているうちにと急いで帰った。
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