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よくマンガとかアニメとか、一人で屋上にいて、たそがれてるシーンとかあるけど現実はどうも違うみたいだ。
全員殴り飛ばしたくなるほどに賑わっている。
弁当をつついてる奴もいれば寝そべってる奴もいるし、下手くそなギターを弾いてる軽音部の奴までいる始末。
せっかく開いた本をすぐに閉じる。
教室で読めば柄でもないと変な目で見られ、図書室で読めば時間を忘れてしまう。
だからこそチャイムの音が一番よく聞こえる屋上を選んだつもりだったのだが、どうやらここも駄目みたいだ。
それこそ柄にもなくトボトボと歩いてしまう。
やっぱり図書室しかないのだろうか。
そう思い、足を図書室へ向けた途端、聞きなれた言葉が耳に届いた。
「おい待てよ」
何故か知らないがよく絡まれる。
親父も若い頃はよく絡まれたって言ってたから、遺伝的なものかもしれない。
次に続く言葉を予想しながら声のした方へ体を向ける。
「お前さっき俺にぶつかっただろ」
予想外の言葉だった。
もちろんぶつかった記憶なんて一切ない。
「おい聞いてんのかよ」
胸倉を掴まれる。
顔が近い、息が臭い。
「ごふっ!」
絡んできた見知らぬ彼が前方に吹っ飛ぶ。
親父から直々に教わった唯一の技。
相手と距離を取りたい時は余計なことを考えずにただ足を前にだせばいいという簡単な教え方だったけども。
なんて言うんだっけか。
あ、そうだ。
ヤクザキックだ。
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