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絶対に謝罪だけは言わないと心に決めていた人に、結局言ってしまった。
意味は違うけども。
「あれ? うちの制服だね」
本当に数時間前に酷い虐めにあったのか疑問に思える程、片瀬は柔らかな表情をしていた。
そして、やはり自分の存在が片瀬に気付いてもらえてなかったことに少し残念な気持ちになる。
「ってことは君も同じ高校に通ってるの?」
色々脳内会議で討論した結果、偶然を装い他人のフリをするというものにまとまった。
「うん、私は2年の片瀬真奈美」
「俺は、1年の焔孝志」
片瀬は、ほんわかとした笑みを浮かべる。
「焔君ね。今暇かな?」
「え? まぁ暇っちゃ暇だけど」
片瀬が笑顔でパンと手を叩く。
「丁度良かった。親が迎えに来るんだけど、それまで暇だったの。嫌ならいいんだけど、良かったらお話でもしない?」
「構わないけど、何分くらい?」
「3時間くらい」
当初の予定では、安否の確認だけしたかったはずなのに、予想以上に長く話をすることになりそうだった。
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