タカシとマナミ

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何を話して良いのか分からなかったのは最初だけで、気付けば3時間なんてあっという間に過ぎていた。 今読んでいる本や、趣味、どんな異性がタイプなのか等、時に笑ったり、時に照れたり、片瀬のそんな表情をジッと見ていた。 多分、今その時の映像を第3者目線で見せられたら恥ずかしくて死ねるかもしれない。 理由なんて分からないけど、片瀬と過した3時間は、とても充実していた。 たまにはこういう時間も悪くないと思う。 けど、やっぱり最後まで足のことや、学校生活のことは聞くことが出来なかった。 片瀬は今こんなに落ち着いてるんだとか、言ったところで自分には何も出来ないとか、そんな考えが無粋なことをするなと言葉を詰まらせた。 結局、何をしに病院まで行ったのかを考えたのは自宅のベッドの上でゴロゴロとしだした時だった。 元から片瀬のことなんて分かってなかったけど、今日の会話で更に片瀬とういう人間が分からなくなった気がする。 虐めに対してどう思っているのか、なんでそんな笑顔でいられるのか。 そしてもう一つ疑問がある。片瀬が虐められる原因が分からないということ。 こう言うのも変だが、女子から嫌われるような八方美人でもないし、根暗でもなければオタクでもない。 どこにでもいると言うよりは、それよりも評価の高い誰とでも仲良く出来るタイプの子だ。 まぁ、これは俺が勝手にそう思っただけだから何とも言えない。 女子には女子にしか分からない虐め衝動というものがあるのかも知れないし、もしかしたら片瀬の隠れた性格というのがあるのかもしれない。 …結局は俺が何を考えても無駄だということだな。 馬鹿らしくなってきた。 頭をボリボリと痒いた後に枕元に置いてある携帯に手を伸ばす。 いつの間にか新着メールが1件入っていた。 すでに何百回と繰り返した動作でメールを開く。 送信者の欄には久しく連絡を取っていなかった『雅也』の名前があった。
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