タカシとマナミ

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夜道を下を向きながら歩く。 上下ジャージ姿で家を出てしまったことに気付いたのは、もう大分歩いた頃だった。 まさか雅也が未だに自殺願望を持っているなんて思ってもなかったな。 家を出てからすでに3回程確認しているが、何回見ても雅也からのメールには同じ文字が打たれていた。 『学校に火を付けて俺も一緒に燃えようと思ってる。孝志、お前は俺のことまだ友達だって言えるか?もう嫌なんだよ一人でいるの』 同じ中学を卒業した雅也と俺は同じ高校に合格して一緒に喜びを分かち合った仲だ。 けど、その高校に雅也が来ることは一度もなかった。 何度も電話したり、家にまで行ったりしたが雅也どころか親ですら姿を確認することが出来なかった。 その時は裏切られた気がしてむしゃくしゃしていたのを覚えている。 会ったら一発殴ってやろうくらいの思いで数ヶ月程、雅也の家に通ったが、結果は同じで次第に行く回数が減り、最終的には通うのを止めた。 親友だと思っていたのに、意外と薄情な自分になんとなく嫌悪感を抱いて過す毎日。 さっきメールが来るまで雅也のことを忘れていた。 そのことにまた当時の自分に対する嫌悪感が蘇る。 胸が痛くなるのが耐えられなくて、思いっきり首を振り、そのことを追い払った。 しばらくして落ち着いた頭で思い出す。 確か、雅也が最初に自殺したいと言い出したのは3年程前だ。 所々セリフは忘れてるし、どんな流れでそんな会話になったのか覚えていないが、確かに雅也はこう言った。 『なんとなく、自分が誰かに殺されることを想像してた時、俺、自分の首をビニールテープで縛ってたんだよ』
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