タカシとマナミ

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「そんなに息切らしてどうしたの?」 学校の校門前にいたのは雅也ではなかった。 ある意味、雅也がいるより驚いたと思う。 そこには、病院で会った時と変わらない笑顔の片瀬がいた。 片瀬の問いに息を整えてから応じる。 「片瀬こそなんでこんなところにいるんだよ。まさか一人でその車椅子に乗ってきたのか?」 「私の家近いの。今度遊びに来たらいいよ」 片瀬も俺と同じでここにいる理由は話さなかった。 「時間ある?」 俺が黙っていると片瀬は変わらず笑顔でそう言ってきた。 「あるっちゃあるけど、今はここを離れる訳にはいかないんだ」 雅也のことがどうも気になる。 万が一に備えておいてもいいだろう。 「ここって範囲は校門前だけ?」 アゴに人差し指を当て、難しい顔をしながらそんなことを聞いてきた。 「いや、ここってのは学校のことだよ。全体が範囲内」 「丁度良かった」 片瀬が手をパンと叩いて再び笑顔になる。 どうやら嬉しいことがあると手を叩く癖があるようだ。 「私のこと背負って私のクラスまで運んでくれないかな?」 「…なんで?」
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