44人が本棚に入れています
本棚に追加
「気にしないで。私はそんなことで落ち込んだりする程、心が綺麗じゃないから。それにこれを見たら焔君は、どっちにしても引く思うよ」
片瀬は次々と包み袋から何かを取り出しては机に並べた。
太めの釘、空の注射器、頑丈そうな縄、折りたたみナイフ、そして錠剤の正体は睡眠薬。
そのどれもが学校では使わないであろう代物だった。
ここまではっきりと見せられたらいくら俺でも気付く。
片瀬は学校で自殺をしようとしていたんだ。
「ね? ドン引きでしょ。読書が好きな純粋な女の子だと思った? 私は学校にこんな物を持ち込んで、いつか使おうとか思ってたんだよ。焔君が私のことを図書室で見かけた時もね」
「…え?」
あまりにもサラッと言うもんだから聞き逃すところだった。
「俺が図書室で片瀬を見ていたこと知ってたの?」
「うん、知ってたよ。私も焔君が気になってたから」
まるで夢の中のようにポンポンと話が飛ぶ。
10分前の片瀬はもういない、漠然とそんなことを思った。
「…なんて言ったら運命感じた?」
突然片瀬がイタズラを仕掛けた子供のような顔をしてそんなことを言った。
「嘘です。私は図書室で焔君が居たなんて本当に気付いてなかった。ただ、病院で私にどんな本が好きか聞いたでしょ? 私、図書室でしか本を読まないからその質問は私が図書室で本を読んでいる所を見ていなきゃおかしいの。だって普通は最初に『本読んだりする?』って聞くはずだもん」
こりゃやられたな。
だとしたら片瀬は今まで俺が嘘付いていることに気付きながらそれを嘲笑ってたのか。
「なんで」
俺と片瀬の言葉が重なった。
2人して驚きに目を見開く。
数秒見詰め合ってしまった後、片瀬がお先にどうぞと手をこちらに向けた。
「…なんで俺が片瀬を知っていることを知りながら気付かないフリしたんだ? 俺が滑稽だったからか?」
最初のコメントを投稿しよう!