セイジとユカ

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その後、HRの時間も迫っていた為、郁也と別れて自分のクラスへと戻った。 さっきまで静かだった教室は、まるで別世界のような賑わいで少しうんざりした。 「あれ、誠二どこ行ってたんだよ。日直だったんだろ?」 席に着くとすぐに和也が僕の所へやってきた。 「あぁ、ちょっと暇だったから校舎をウロウロしてたんだ。和也は朝練だったよね、お疲れ」 和也とはまだ知り合ってから日が浅い。 1年生の時は、お互い存在すら知らなかったのだからこの中学校の広さには呆れてしまう。 和也とは知り合ってすぐに仲良くなれた。 ルックスや行動は、全くタイプの違った僕らだったが、それが良かったのかもしれない。 郁也と比べてしまうとやはり和也も子供だが、それでもクラスの中では一番まともだった。 「なぁ、今日さ、桜木見た?」 あまりにもふいの質問にキョトンとしてしまう。 「あぁ、いきなりじゃ分かんないよな。C組の桜木のことだよ。噂とかで聞いたことない?」 そんなことは分かっている。 さっきまで見ていた桜木さんのことをいきなり聞かれたものだから戸惑ってしまった。 「見たよ。校舎裏にいた」 「え!! 桜木誰かに告白されたの?」 和也が身を乗り出して大声を上げる。 周りの視線が痛かった。 「いや…」 なんて言おうか迷う。 男子生徒を包丁を持って追いかけていたなんて言い難い。 それに和也の反応からしても言うのはあまり好ましくない気がする。 「掃除してた。多分先生に頼まれたんじゃないかな」 こう言っておいたほうが無難だろう。 「和也は桜木さんに何か用事があ…」 言葉の途中で教室の扉が開く。 それと同時に和也も自分の席へと戻ってしまい、聞きたい事が聞けずに流れてしまった。
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