セイジとイクヤ

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学校に付いたはいいが、カバンを忘れた。 これも早紀のせいだ。 あいつが変なことするからカバンも持たずに家から出てしまった。 日直なんて本当に必要なのか疑うくらいどうでもいい仕事をこなす。 教室にある花の水やりなんて生活委員か風紀委員がやればいい。 生活委員なんてただでさえ仕事がないんだ、これくらいやったっていいだろ。 水をやりながら教室を見渡す。 早く来すぎたせいか一人もいない。 まるでこの教室が自分だけの空間になったような感覚に陥った。 外から聞こえる朝練の奴らの掛け声、蝉の鳴き声、鳥の囀り、それらが自分と違う世界からの音に思える。 少し寂しくもあり、少し高揚感もある。 言ってしまえば哀愁すら感じるさ。 きっと10人に1人くらいは静かな教室で今の僕と同じ感情になるんだろうな。 感情の共有。 それはとても心強くて安心感のあること。 それ故に難しい。
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