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一方、馬騰領武威。
「はあー!」
「ふ、は!腰が甘いぞ!」
鍛練に勤しむ二人。
一人は馬家随一の勇猛、馬超。
そしてもう一人は雷人、“義雷”と呼ばれる女。
「やあああ!!」
「――てえい!」
馬超の一本勝ち。
槍は天高く飛び、義雷が「あ」と呟いた。
馬超の馬が猛り、優劣を明確にした。
「くぅ~!」
「まだまだだな、精進しろ」
「むかー!なにさなにさムキになっちゃって!」
「ムキになってるのはおまえだ」
「くっそ~‥‥覚えてやがれ!」
「どこの小悪党だ‥‥‥」
馬超は馬を馬屋に入れ、次いで義雷も馬を返す。
こちらに来て早数週間、義雷は武に励んでいた。
「しかし‥‥」
馬超は唸る。
「乗馬の技術は驚いたもんだな」
「へっへー!騎乗には自信あるんだよ!」
「うむ、もう岱よりも速いんじゃあないか?」
「従兄上!」
声が響いた。
後ろには馬岱が不機嫌そうな顔をして立っていた。
「お、岱、いたのか」
「たいっちー、よっす!」
「あ、よっす‥‥じゃなくて!聞き捨てなりませんよ先程の台詞!」
「ん‥‥?」
馬岱はビシッと義雷を指さして、唾を飛ばしながら叫ぶ。
「こんな娘より私の馬術が駄目だと言いましたよね!?」
「こんな!?たいっちひでぇ!」
「‥‥事実だろう?」
馬超は呆れたように言う。
馬岱はむむむと唸り、またビシッと義雷を指さした。
「ならば勝負だ!奈々!」
「うぇ~」
「疲れてるんだ、やめてやれ‥‥て、オイ」
馬を二頭引きずり出し、馬岱はやる気満々に乗った。
義雷、もとい奈々と馬超は顔を見合わせ、大きな溜め息をつく。
どうやら避けては通れないらしい。
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