第1章~その名はクッキー~

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『分かればいいんです、分かれば』  アジェッタのその勝ち誇った態度が少し癪にさわるので、男は反撃に出た。 『……もとはと言えば誰かさんが変な格好で来なければ、こんな事にならなかったんだがな』 『うっ』 『しかも、生徒手帳も持ってないときた。これは疑われても仕方ないと思うがな』 『……ごめんなさい』  勝った。 『……でも、でも!仕方なかったんです!課外授業の帰りに、すぐ近くにある村の宿で泊まってお風呂に入ってたら、いつの間にか制服だけ盗られてたんです』  この辺りにある村と言えば、学園から東に位置するノーザ村だろう。  ノーザ村では、学園に侵入しようとしているコソドロ達が多く滞在している。 故に、そんな場所で学園の生徒が風呂に入れば、コソドロ達がktkrと言いながら盗みにくるのだ。 『それでよく戻ってこれたな』 『親切な人が外套をくれたから、何とか戻ってこれたんです』  それは親切と言えるのだろうか。
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