第1章~その名はクッキー~

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『ニール先輩!』  男が自らの人生に見切りをつけたその時だった。  アジェッタがニールの後ろからこちらへ駆け寄ってきたのだ。 『雷伝』  アジェッタは駆けながら右手をニールに向けて、詠唱した。  ニールが後ろに振り向いた時には、もうアジェッタの魔術は完成していた。 『あ、アジェッタちゃん?』 『私の友達を、傷つけないで下さい!』  その行為はアジェッタの先輩に対する初めての反抗だった。  アジェッタの手から放たれた幾筋もの雷がニールに襲いかかる。  普段のニールならば容易に回避できただろう。  だが、アジェッタの反抗に戸惑い、思考が一瞬遅れてしまったのだ。  ニールは魔術の直撃を覚悟して、固く目を閉じた。  だが、その必要はなかった。
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