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『お、お願いします。このままじゃ私、か、帰れな…』
ついには両目から大粒の涙をポロポロと流し、声を殺しながら泣きはじめてしまった。
『ひっく、えぐ、うぅ』
普通の男性ならば動揺してしまい、困ってしまってワンワンするところだが、この男は違ったようだ。
『盗賊なら帰ってくれ』
『っ!?』
男のその一言で、少女は本格的に大声で泣きはじめてしまった。
さすがの男もこれには困り、何とか少女をなだめようとするのだが、
『西ゲートにいけば侵入できると思うぞ』
うまくいかないようだ。
『ち、違いますぅ…えぐ。わた、ひっぐ、私はこ…ここの生徒なんです…』
『なら生徒手帳はあるのか?』
『い、いまは…ないです』
『それなら外套を外して制服を見せろ』
『そっ、それは…!』
男が外套を外そうと一歩前に進むと、少女は三歩後ろへ退いた。
男が更に三歩進むと、少女は早足で七歩退いた。
もしかして、何か隠しているのか?
少女のその不審な行動を怪しく思った男は、間合いを一瞬で詰めて右手に持ったハルバードを振り上げるのと同時に鉤爪を外套に引っ掛け、そのまま勢いよく剥ぎとった。
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