第1章~その名はクッキー~

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『お、お願いします。このままじゃ私、か、帰れな…』  ついには両目から大粒の涙をポロポロと流し、声を殺しながら泣きはじめてしまった。 『ひっく、えぐ、うぅ』  普通の男性ならば動揺してしまい、困ってしまってワンワンするところだが、この男は違ったようだ。 『盗賊なら帰ってくれ』 『っ!?』  男のその一言で、少女は本格的に大声で泣きはじめてしまった。  さすがの男もこれには困り、何とか少女をなだめようとするのだが、 『西ゲートにいけば侵入できると思うぞ』  うまくいかないようだ。 『ち、違いますぅ…えぐ。わた、ひっぐ、私はこ…ここの生徒なんです…』 『なら生徒手帳はあるのか?』 『い、いまは…ないです』 『それなら外套を外して制服を見せろ』 『そっ、それは…!』  男が外套を外そうと一歩前に進むと、少女は三歩後ろへ退いた。  男が更に三歩進むと、少女は早足で七歩退いた。  もしかして、何か隠しているのか?  少女のその不審な行動を怪しく思った男は、間合いを一瞬で詰めて右手に持ったハルバードを振り上げるのと同時に鉤爪を外套に引っ掛け、そのまま勢いよく剥ぎとった。
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