第1章~その名はクッキー~

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『え?』  そこにあったのは、両手首の二つの金色の腕輪と、パンツ以外何も着てない少女の姿だった。  少女は己の状況にまだ気付いていないのか、呆然としたまま身体の方に目線を移した。  すると、少女の顔から表情がパッと消えた。  次の瞬間、少女は耳まで顔を真っ赤にし、両手で“まな板”を隠しながら大声で叫んだ。 『きゃああああああああ!!』  その時、誰に教わったのか、何でそんな言葉が出てきたのか分からないが、男はぽつりと呟いた。 『痴女』  そして、どうやらその一言は少女にもちゃんと聞こえたらしい。  すくと立ち上がった少女は泣きながら片手を男の方に向けた。 『雷伝…!』  少女がそう呟くと、手首の腕輪が急に広がり、その内側に光の模様が発生した。  これは――魔術か!  しかし、男がそれに気付いたときには、もうすでに手遅れだった。魔術が発動した。  それは雷の魔術の一つ、ショック・ウェーブ。 『痴女じゃないもんっ!!』  轟音とともに少女の手首から発せられた幾筋もの雷が、男の身体に直撃した。  その瞬間、男はとても重大な事を思い出してしまった。何で忘れていたのか不思議なくらい大切な事を。  しかし、男は喜ぶ暇もなく気絶した。      
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