空を見ながら…

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「ひとしきり泣いた空は、不思議な位晴れていた。   俺は、空に登る煙りだけ見つめていただけなのに、涙がこぼれる。   雨?…いや、こんなに晴れているのに?頬をつたうそれは、雨粒なんかじゃなかった。   俺は泣いてるのか? 涙なんて、もぅ久しく流してなぃから、涙の感触が良く分からなくなっていた。   涙を拭う事すら忘れて、漂って薄れ行く煙りを見つめていた。   何の言葉を言って良いか分からない。   声も満足に出せない。   この心の痛みは なんだ。   俺を残して逝くなんて…俺に涙を流させるなんて…俺は…。   ただそれだけが、頭をよぎる。   黒い服に、白いシャツ。 …黒いネクタイを取り、今は晴れた空を見上げ続けた。   なんて朝だろう。   お前と会ったのも、こんな朝だったのに…。   白く冷たくなったお前を、そっと抱きしめた、その時のお前を思い出していたよ。   初めて会った時の事も、ゆっくり思い出していたよ。   俺の傍らに、いつもお前が居た。   …今も、そんな気がするょ。   最後の煙りが薄れ行く…さよならだね。   忘れなぃよ。   すっかり晴れた空に、手をふる。   小さく…そして大きく。   灰を、優しくすくう。  また、生まれて来たら、会いたいな。   だから、さよなら、またな。 そして、お昼の晴れた空を見ながら…帰る。   俺に、さよならすら言ってくれなかったのは、また会うためだと、思って良いか?   また、生まれて来いょ。   …つぶやいた。   俺は、少しだけ涙の跡を隠して笑う。   空を見ながら…。」
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