トモシビ

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『ある山奥に、女の子とお父さんが二人で住んでいました。   二人にはお母さんは居ません…女の子が小さい頃病死したのです。   お父さんはいつも山奥から街に仕事へ行っていましたが、夜は暗くて道が分からなくなるので、お父さんの為に女の子はいつも、家の近くに灯りをつけて、お母さんの形見のランプを持って待っていました。   でもある日…女の子は夕方になる前に、うたた寝をしてしまって、気付くと真夜中です。   お父さんは道に迷って帰って来ません。   慌てた女の子は沢山探しました。   でもどんなに探しても、お父さんは見つからない。   悲しくなって、自分を責めた女の子に声が聞こえました。   「大丈夫よ。だから、そこを動かないでいてごらん」…不思議に思いながらもじっと動かず、その場で立っていました。   ランプの灯りが消えそうになると「もっと明るくともして…」と。   言われるままに明るく…数時間後、女の子は驚きました。   お父さんが「ただいま」と現れました。   すると空が段々明るくなってゆきました…夜が明けたのです。   明るくなって行く道を笑顔で歩いて帰りました。   ランプを忘れて…それに気付き、引き返そうとする事は、疲れていた二人には考えられませんでした。   それから家に着き、扉を開けると「 おかえりなさい。   もぅ道を見失う事の無いように」と、病死したはずのお母さんが、笑顔で女の子に、あの忘れたはずのランプを手渡し…すぅっと消えました。   それからというもの、沢山のトモシビで女の子はお父さんの帰りを待っています。   二人には、お母さんが優しいトモシビでした。』
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