兎一羽の物語

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「ある時…兎は森を抜けました。   沢山跳ねて、青い空を見つけました。   沢山跳ねて草原を渡り、夜には優しい月に酔い、昼の日差しに木陰を求めました。   熱い時、冷たい水を探して沢山跳ねます。   川も泉も無ぃ草原です。   とても喉が渇きます。   朝露、夜露を舐めました。   兎は一羽…夢をみます。   森に来た鳥達が言っていた、大きなあの空と同じ色の、大きな水たまりを探す事を。   兎は森を抜けました。  沢山跳ねて、草原を渡り…沢山の事を知りました。   怖い事も沢山ありました。   兎は夢の為に、頑張って生きてきました。   川にたどり着くと、川下へと跳ねて行きました。   大きな水たまりを、探すために。   大きな水たまりとは、海でした。   沢山跳ねても着きません。   ある夜兎は力尽き、海を目指して旅に出ました。   空を跳ねて…天の果てに。   兎は思いました。   たどり着けなかったけど、沢山の事を知って、沢山のものを見て聞いて、怖い事もあったけど、素敵な一生だったのだと。   森の中では、知る事が出来なかったはずです。   幸せ抱いて、天を跳ねて…目指すは月の海でしょう。」
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