桜の精

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「ある朝の事…綺麗に咲いた、満開に近い庭の桜の木の枝に、それを見つけた。   ヒラヒラと、桜色に揺れる…まるで天女の羽衣。   まさか!? と思い近づいてみる…。   スカーフか…何故? …そぅ思い手にしてみると、柔らかく薄い布…やはり羽衣の様だ。   温かい風が、桜の花びらを散らす。   ふ…と上を見ると、幾つもの花びらが宙を舞う。   また、ふ…と桜の木の方へ目をやると、そこにゎ見知らぬ女性が居たのだ。   慌てて羽衣を背中に隠してしまった。   …誰かと問う前に、彼女は自ら口を開き、不思議な事を言った。   「桜の羽衣を知りませんか?」   驚きを隠せなぃまま、何も言えずに居ると、彼女はこう言ってきた。   「私は、桜…この姿では、羽衣無しに風に乗れないのです。伝えに行かなくては…だから、羽衣を探しています。」   背中に隠した羽衣を、ギュッと握り…   「何かあったの?」   と、思わず聞いていた。   「次の桜達に、蕾の開きを伝えに行き、春を促すのです…今年は私がその役目です。羽衣は、私の枝にあったはずなのに…」   訳が分からない…思考が停止している。   でも、この羽衣を返さなくては…。   涙ぐむ彼女に…隠していた羽衣を差し出すと…咲き誇った桜より可憐に笑って、羽衣を受け取り…   「ありがとう」   と言い…春風に、ふわりと舞い上がり桜の花びらと共に、空に…消えた。     翌日…沢山の桜が咲き乱れて、それは美しかった。   庭の桜が…もぅ葉桜になってきていた。   まるで…彼女が、誇らしげに笑っている気がして、思わず照れてしまった。   あの羽衣を返さなければ、今年の桜は…どぅなっていたのだろぅか。 …考えると、少し怖い。   春…桜が…咲き誇った。」
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