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「苑亞」
「……何?」
「雪の下には、何が埋まっているんだ?」
感情の起伏の少ない、張りのない問い掛け。
何を考えているのか、とふと覗き込んで見た瞳は、底の見えない沼の様に濁り切っていて、何も映していないみたいだった。
「雪の下には、ただ地面があるだけだよ」
始め、私はそんな味気ない、何の面白味もない答えを言おうとしていた。
きっと少し昔の私なら、特に考えもせず、操り人形のように冷たい決まりきった言葉しか返さなかっただろう。
でも今は違う。ちょっとはマシになって、ちょっとは人間らしくなった。
だから思ったんだ。彼の求めている答えとは違うのだと。今の彼は何も誰にも求めたりしないが、でも本当に欲しい答えは違うと思う。
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