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一人の少女が歩いて来る。
その道は、馬車が通れるか甚だ怪しい、生い茂る木々に挟まれた道だ。滅多に人が通らないのか、ろくに整備されておらず、でこぼこ道となっている。
そこを歩く少女は、真っ黒なフード付きローブを纏っている。黒い長髪が少し覗くが、ほとんどは目深に被ったフードで見えず、表情もうかがえない。
見事な黒装束。しかしそれだけではない。彼女は更に追い討ちをかける物を背負っている。
鎌だ。
少女に不釣り合いな大きさの、漆黒の大鎌。
小柄な少女には似合わぬはずのそれも、彼女の黒一色の格好に溶け込んでしまっている。
しかしそんな格好でも陰気な印象はあまり受けない。逆に気品のようなものすら感じる。
例えるならば黒猫。
そんな少女が黙々と一人進む道。足音もほぼない、静寂に支配された道。だが、その空間を侵す者達がいた。
盗賊だ。
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