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避けながらも、少女は器用に魔法を準備し始める。
まずは集中。そして詠唱。
良く通る声が響き渡る。
〈──来て欲しいと願います
私の声は届きますか?
貴女は応えてくれますか?
私の愛する友よ
今こそ、
貴女の助けが必要です
風と遊ぶ気高き一族
白き身に紅き印を纏う貴女
今貴女の名を呼びます
今私は貴女を喚びます──〉
恐らくこの詠唱の言葉の意味がわかった者は、少女を除いていないだろう。何故なら、この世界の言葉ではないから。
ただ、盗賊達も何か来ることはわかるので身構えた。
詠唱は終わったが、まだ、続きがある。大切な、大切なこと。
少女はそっと、しかしはっきりと口にする。
呼び出すものの名を。
〈──さあ、風の音色を奏でて
貴女の名前は──『風音』〉
少女がその名を口にした次の瞬間、突風が吹いた。
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