3人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
「な、なんだこの風っ痛──っ!?」
「うぎゃあ!」
「な、何が起こってる!?」
その突風はただの風ではなかった。ヒューと風が吹けば、たちまち盗賊達に裂傷が刻まれていく。
「何しやがったガキ!」
と、少女に掴みかかろうとした盗賊も、即突風に吹かれ、ぼろぼろになり倒れ伏した。
そうしている内に、いつの間にか盗賊達は皆沈黙していた。……させられた、と言うのが正しいが。
「……ご苦労様、風音【カザネ】」
少女は右手をすっと挙げる。
すると散々暴れまわっていた風は大人しく少女の元へと集まり──
姿を現した。
「キュ~」
そんな可愛らしい鳴き声を発するのは、白い鼬。これがさっきの突風の正体だ。
その鼬は真っ白。例外は背にある朱の大きな×模様、異様に太く長い黒爪と、人懐っこそうなくりくりした黒の瞳だけ。
全長三、四十センチ程。細長い身体だが、か弱い印象は受けず、逆に力強さのようなものを感じる。存在感のある爪や可愛いだけじゃない活きた目の黒によるものか。
最初のコメントを投稿しよう!