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茜色の空
鮮やかな夕日に彩られた公園
そこに、小さな小学生が二人、手を繋いで遊んでいた
私達は並んでブランコに乗り、鉄棒で一緒にさかあがりを練習した
「楽しかったね」
「え…」
私はそこで気付いた
もう太陽がずいぶんと山に近づいている
世界は赤く照らされている
もう、帰らないといけない時間だ
「バイバイね、あお」
私は『あお』と向かい合った
「…うん」
私は首を傾げた
何故だろう
『あお』に元気がないようだ
「どうしたの?」
私が尋ねると、『あお』は悲しみに溢れた瞳で、私を見つめた
「僕…今日、遠くへ引っ越すんだ…」
「え…」
今、何と言った?
引っ越す?
「だから…君と遊べるのは…」
「やだっ!」
私は『あお』の言葉を遮った
信じられなかった
信じたくなかった
嘘だと思った
嘘だと思いたかった
『あお』にも嘘だと言ってほしかった
「…ごめんね…最後に…君と遊びたかったんだ…引っ越す前に…」
「…嘘だよ…」
「…ごめん…」
「嘘だよぉ!…いやぁ…いやぁ…あお…もう遊べないなんて…」
「ごめんね…僕…君の事忘れないよ…」
『あお』は泣きじゃくる私を、優しく抱いてくれた
私は涙でにじんだ視界の端に、『あお』のお父さんを見つけた
「うえ…う…」
「バイバイ…」
その言葉は深く、深く私の心に突き刺さった
忘れられないあの日
このお話の始まり
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