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静かな空間とリン自身の集中力が時間の流れを忘れさせ、はっと気が付いたとき、時計を確認するとあれから40分も経過していた。
まだ見ぬ名失者を心配したリンはその場で待つことなど出来ず、外に出て家の前で待つことにした。
そして話は冒頭へと繋がる。
鼻をすんすんと何回も鳴らしていたためきっと今、自分の鼻は赤いのだろう――そう思ったリンはマフラーをしてくれば良かった、と白いため息を吐いた。
真後ろである家に取りに戻れば良いのだが、暖かい室内に一度入ればもう外に出たくなくなるだろうと思い、実行に移せなかった。
あと5分経ったらマフラーを取りに戻る。そう決意した時、漸く前方に人影が見えた。揺らめいていて、消えてしまいそうなだった。名失者だ、とリンは確信する。
段々と近付くにつれて今回の名失者――彼の容姿や顔立ちが見えてきた。
18歳~22歳、目鼻立ちの整った黒髪の青年。身長は170センチはある。勿論リンより背が高いので、軽く見上げる形になってしまう。そんな青年の瞳はどこを見ているのかわからない朧げなものだった。
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