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青年のゼロ症候群はレベルⅡ。
一般的な知識は残っているが、『寂しい』や『嬉しい』などの感情の一部に理解が欠けている状態のことだ。
ふと窓の外で雨音が聞こえ始めた。リンは窓へと歩み寄ってガラスの向こうの空を見上げる。
「あれ? 変だな、雨だ」
この寒さの中、雪ではなく雨が降ることなどあるのだろうか。青年は虚ろな目でしとしとと降る雨をを見つめていた。
まだこの地にリン以外のネーム・コンダクターがいた頃、ネームの地の天候は名失者に影響され易いとネーム長に聞いたことがあった。
雨が関係している。事前に情報を得られるのは嬉しいが、太陽が沈んだ今から名前へ案内するのは適さないと思い、明日に持ち越すことにした。
2人で夕食をとり、順番に浴室を使ってから客間へ案内する。始終申し訳なさそうな彼の様子にリンは青年の人柄や過去を感じ取った。
「リン、ありがとう。……おやすみ」
「おやすみなさい。また明日」
その夜、久しぶりに誰かと過ごすことにリンは嬉しさを感じながら眠りについた。
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