さよなら

8/8
17人が本棚に入れています
本棚に追加
/41ページ
光姫が急変してから7日後の、6月16日―。 梅雨独特のじめじめした日だった。 光姫は、天国へ旅立った。 俺は、突然の喪失感から、すぐには光姫の死から立ち直れなかった。 光姫がいなくなったことを、受け入れるのが怖かった。 きっと俺は、精神病者のように見えたと思う。それだけ、光姫の存在が大きかったということなんだろう。 2年後― 俺は光姫との約束通り、専門学校に入り、資格を取った。 光姫との約束、それは、人を助ける職業に就くこと。 俺は介護ヘルパーという資格を選んだ。 現在俺は、とある施設で介護職員として働いている。 今日は光姫の命日。俺は、光姫の墓にやってきた。 花を供え、線香を焚いて、手を合わせた。 「光姫…。俺、約束守ったよ。 もう心配しなくて大丈夫だからな。一人でやっていける。」 俺は墓に向かって語りかけた。 無償に、光姫の声が聞きたくなった。 でも、俺は光姫の分まで生きていかなきゃな。 「また、来るからな。」 俺はそう言って墓を去った。 俺は、君のことを忘れないだろう。 この先も、ずっと。 完
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!