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「光姫、体調は?」
「大丈夫。今日はだいぶ調子がいいみたい。」
「じゃあまた行っちゃう?」
「うん。」
俺と光姫はまた夕方の屋上へ繰り出した。
俺が一度連れだして以来、光姫は屋上がお気に入りだった。
屋上でこうして過ごすと、夜寝付きがいいらしいのだ。
「…私、あと何回ここに来ることできるのかな?」
「え…?」
「死にたくないよ…。
壮介とまだまだ一緒にいたいよ。」
光姫が俺の前でこんな弱音を吐くのは初めてだった。
いつ悪化するかもしれないと聞かされて以来、光姫はしばしば情緒不安定になった。
きっと怖くて仕方ないのだろう。
死期が近づいてくるのがたまらなく怖いのだ。
「光姫、大丈夫だから。俺が側にいるから。」
震える光姫を優しく抱きながら、俺は「大丈夫」を繰り返した。
これしか、俺にできることがなくて。
「光姫…俺といるときには、病気のこと忘れろよ。
せっかくの夕日も無駄になっちゃうだろ。」
「…そうだね。ごめん、壮介。」
光姫は俺の言葉に、素直に頷いてくれた。
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