さよなら

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彩姫ちゃんの案内で、俺は光姫の病室に着いた。 薄暗い廊下のベンチには、光姫の両親の姿があった。 光姫のお父さんは祈るような表情で座っており、お母さんの方は、タオルで顔を覆い、ヒステリックに泣いていた。 「お父さん…この人が壮介さんだよ。」 彩姫ちゃんが一歩前に進み、お父さんに向かって言った。 「お姉ちゃんを、笑顔にして、支え続けてくれた人だよ。」 その言葉に、光姫のお父さんは顔を上げ、俺を見た。 そしてゆっくり立ち上がり、俺の方に向かって来た。 「…君が、壮介君か…。」 「…はい。神坂壮介といいます。」 俺は目の前に来た光姫のお父さんに自己紹介し、頭を下げた。 「…彩姫から、話は全て聞いた。 光姫が…ずいぶんと世話になったようだな。」 光姫のお父さんは、俺の目を見据えながら言った。 「いえ…俺は何もしていません。光姫…いえ光姫さんに世話になったのは、俺の方です。 俺は光姫さんに、生き方を変えてもらいました。」 「光姫が…そんなことを?」 「はい。」 「そうか…。 しかし、悔しいが、君が光姫を支えてくれたこと、光姫が笑顔になったことは事実だ。 ありがとうな。」 光姫のお父さんは、俺に頭を下げた。
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