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哉依子さんの病室を出た後、俺はぼーっと廊下を歩いていた。
と、その時だった。
どんっっ!!と音と共に誰かとぶつかってしまったんだ。
「きゃっ!!」
彼女はその場に倒れてしまった。
俺は参考書を読んでいて、歩いてくる彼女に気付かなかった。
俺は参考書を放り出し、彼女に駆け寄った。
「君、大丈夫?
ごめんね。俺の不注意で。」
彼女を抱き起こして、俺は言った。
「ご、ごめんなさいっ!
大丈夫ですっっ!」
彼女は俺の手を慌てた様子で振り払った。
俺は彼女を見て驚く。
パッチリした瞳、長い睫毛。
整った目鼻だち、艶やかな髪。
彼女はとんでもなく美人だった。
俺が見とれているうちに、彼女はまた立ち上がって歩き出した。
しかし、その足取りはどこかふらついていて、危なっかしかった。おまけに壁にぶつかるし、人にもぶつかっていた。
俺はとても見ていられなかった。
…彼女を放っておけない、そう思った。
俺は自分でも無意識のうちに彼女を追い掛けていた。
「待って!俺、病室まで送るから。」
そう言って俺が彼女の前に回り、肩に触れると、彼女はビクッと体を震わせた。
「いいです!放して下さいっ!」
再び彼女は俺の手を払いのけようとした。
でも、その瞳は、俺を見ていなかった。
「ねぇ、君、もしかして目が見えてないの?」
俺の問いに、それまでもがいていた彼女の動きがピタッと止まる。
そして、彼女は静かに頷いた。
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