一章─カインの花嫁─

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一章─カインの花嫁─

「いなくなったあ?」  新学期。  学食で、俺の話を聞いた奈美が、でかい声を上げた。    昼前の学食には、ちらほらとしか人がいない。俺の目の前のトレイにはカレーうどん、奈美のトレイにはハンバーグ定食の大盛が乗っかっている。 「いなくなったって、どういうこと?」 「文字通りの意味だ。どこに行ったか分からないってことさ」 「いつ?」 「三ヶ月くらいになるな」 「ああもう! なんでそう簡単に逃がしちゃうのよ!」  まるで、自分が当事者であるかのような勢いで、奈美が言った。 「なんでと言われても……」 「そう言えば、あたしがミアちゃんと会った日から、司、一週間くらい行方不明だったよね」 「ちょっとな」 「何か、あったわけ?」 「……」  まさか、ミアを狙っていた異端審問官に監禁されていたとは言えない。  さらには、そんな俺を救け出したミアが、その異端審問官を葬ったとは――。  ガルシアらしき死体が路上で見付かったという記事が新聞に載ることはなかった。おそらく、奴の属する組織の連中が、秘密裏に処理したのだろう。  つまり、ミアと敵対する連中は、まだきちんと活動をしているということだ。  吸血鬼と、それを葬ろうとする人間達――。
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