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「――神楽修三だな? なぜ、邪魔をする?」
「そりゃお前、こんな場所でどたばたやらかしたら人様に迷惑だろうが」
神楽修三と呼ばれた男が、太い声で、ひどく常識的なことを言った。
「殺気だったお前さんの巻き添えでここら一帯が血の海になるのが目に見えるようだぞ」
「大きなお世話だ」
「そう言うな。一応、ここは俺の生まれた国だしな」
笑いながらそう言う修三から、ユーリーは、視線を逸らそうとはしない。
これだけの巨体でありながら、自分にも、そしてアランにも気配を悟られずに近付いてきた修三の力を見極めようとしているかのようだ。
それは、明らかに、敵を見る目だった。
「おいおい、お前さんの相手は吸血鬼じゃなかったのか?」
「それと、我々の邪魔をするような連中だ」
言われて、修三は、肩をすくめた。
そして、ひょい、と横を向く。
「おぉい、そろそろ出てきて説明してやれよ」
そう言う修三には、しかし、一分の隙もない。
と、物陰から、ユーリーと同じ灰色のコートを着た男が現れた。
だが、その体型は、ユーリーの対極にあるように、でっぷりと太っている。
「先生――!」
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