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「じゃあねー」
「また明日!!」
「うん、またね。」
少女の家に着いた。
もっとここよりさきに家があるらしい友人達に少女は笑顔を貼り付け手を振る。
友人達は嘘の仮面だとは気付かず、手を振り返し彼女達は別れの挨拶をした。
夕日で二人の影が伸びて遠ざかってゆく。
「…………。」
煩い二人が夕焼け空に溶け込むのを見届けると、機械のように振っていた腕を、彼女は下ろした。
その顔からは日溜まりのような笑みは既に消え失せ、何の感情も浮かばない無表情だけが彼女の表情を支配していた。
少女は家の門を通ってすぐに曲がり、玄関へは行かずに庭に出る。
彼女の母が大切に育てている家庭野菜を避けて奥へ奥へと入っていった。
鼻をかする土の匂い。
鬱蒼とした茂みを越え、隣の家のブロックの塀と少女の家の壁に挟まれた人一人が縦になってやっと通れるくらいの薄暗いじめじめとした細道に躊躇なく足を踏み入れる。
鞄とスカートを汚さぬように押さえながら一歩、二歩と、しかし速足に少女は進んでいく。
――まるで一つの目的地に向かうように…
ふと、少女が足を止めた。
そして前に手を押し出し、家の壁をそっと押す。
(そして開いた隠し扉)
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