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開くと同時に嫌な臭いが生暖かい空気に混ざって顔にかかった。
少女はそれに顔をしかめるどころか、口角を上げて暗いその空間に一歩踏み出す。
カーン…
革靴の底が何かにぶつかり金属の音を木霊させた。
中が広いのだとわかる。
その瞬間、ヒュッと息を吸い込むような、中から生き物の気配がした。
暗闇は語る。
緊張、恐怖、怒り、…
肌でそれを感じながら少女は口角をさらに引き上げ目を細めた。
少女にとっては、大好物のもの。
中に居るのは今回の彼女のターゲットである男だ。
今更ながら、彼女は普通の女子高生ではない。
世にいう、"殺し屋"…
それも依頼は無償で受け、殺しを愉しんで実行する、いわば"死神"であった。
彼女はターゲットを見付けては、自分しか知らないこの部屋へと監禁し、腐ったこの俗世間へのストレスをその者を殺すことによって排除している。
更生?そんな言葉は彼女の辞書にはない。
少女が知るのは殺すことの悦びのみ。
我が身をその暗がりに入れ、自分を待つ者のために地下へと続く鉄の階段をわざとらしく足音を立てながら彼女は降りていった。
一歩、一歩、
ゆっくりと踏みしめて、
(心臓の鼓動が速く鳴り出す)
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