傍観者と殺人鬼

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修学旅行のバスの中は賑わっていた。 今から三日間、どんな楽しいことが起こるのだろうとみんなが期待に胸を膨らませていた。 そんな中、ぼくの隣に座っている殺人鬼は沈んだ表情で椅子に深く腰かけていた。むすっとすぼめた口元からはみんなのような明るい声が飛んでくるとは到底思えない。 彼が人混みを好まないことは知っていたが、いつもは明るい彼がこうやって黙り込んでいるのは不自然な心地だった。 いつもは一人で喋って一人で笑っているようなやつのくせに、団体行動になるとここまでおとなしくなるのかと、認めたくはないけどぼくは少しばかり彼を心配する気持ちでいた。
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