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「おい、大丈夫か?黙り込みすぎじゃないか?」
ぼくは顔を覗き込んで訊いてみたが彼はすぐに顔を背けた。
その態度にむっとしたぼくは刺々しく言う。
「あーあ、せっかくの修学旅行なのにこんな暗いやつが隣だと楽しめないよ」
その言葉に彼はこちらを向いて、眉をしかめて言う。
「馬鹿かお前は。俺が人混みが嫌いだってだけで沈んでると思ってんのか?どんな空気の読めないやつだよ俺は。ただはしゃぐだけならこのバスの中でなら一番になる自信はあるよ。自慢にはなんねーけどな」
たしかに自慢にはならない自信だった。
「じゃあなんなんだよ。何をそんなに沈んでるんだよ」
「あの女だよ」
彼は通路に身を乗り出して一人の女の子を指差した。
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