3.

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珍しいこともあるな、と腕を首に回して、頭をポンポンと叩いてやる。 ずるずると、寄り掛かるように俺の首筋に顔を埋める。 夏唯が可愛い。 「なぁ、もしかしてさ……」 「ん?」 ひゃっ!く、首筋で喋るなっ。 「げ、劇の配役のことで、へこんでる?」 「…………」 あ、やっぱりそうか。 「大丈夫か?」 「……まさか姫役とはな……」 「うん……」 あの場にいた誰もが、『まさか』と思っただろうね。 「はぁっ……最悪だな」 姫役にあたった事でへこむ夏唯が可愛くて、つい笑いが零れた。 「アハハッ」 「なに笑ってる」 「だって、夏唯が可愛くてっ、アハハッ」 首筋に埋まる黒い髪をサラサラと撫でながら笑っていると、憮然とした表情の夏唯が顔をあげた。 「笑うな」 ムスッと拗ねる夏唯。 滅多に見れないその表情に、なんだか嬉しくてうずうずする。 この夏唯は俺だけしか知らない。 俺だけしか知らないんだ。 「今日は、特別に甘えさせてあげる」 ニヤッと笑うと、 「琉華」 「ふ、わっ?!」 ぐいっ、と腕を掴まれて引き寄せられ、そのまま膝の上、向かい合わせに抱っこされた。 「ちょっ、夏唯っ、くすぐったっ」 額に瞼に、頬にキスが落ちてくる。 「ふ、んっ……」 唇に落ちたキスが、角度を変えて深くなる。 絡まる熱い舌。 次第に漏れる甘い吐息。 「んっ……ふ、ぁ」 ヤバッ……力、抜ける…… 「ぁっ、ふ……」 チュッと音を立てて離れていく唇。ほわん、とする視界に夏唯が映った。 ペロリと唇を舐める仕種がいやらしい。 夏唯は目を細めてニヤリと笑うと 「沢山甘えさせてもらうか」 「ふ、ぇっ?」 甘く甘い微笑みと共に、甘いキスが落ちてくる。 「今日は甘えさせてくれるんだろう?」 って!やられたぁっ!! こうしてまた俺は夏唯の意のまま思うままに…… .
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