序章~手紙~

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世間の一部が、祝賀ムードに浮かれる中、私はいま心中で鬱々をとぐろを巻くどす黒い感情を抑えきれずにいる。 それを何とか誤魔化す為に、今こうしてそれを一文にして残すことに決めた。 私は、この無駄に長い人生のすべてを一つのテーマにささげてきた。 その成果が同胞の未来に貢献出来ると、今の今までまるで信仰のごとく信じ続けて来た。 だが、自分の成してきた仕事がようやく結実しする段に至り、大いなる過ちだと気が付き、私は酷くうろたえ、深く後悔した。 君は、その醜態を遥か高みで笑うだろうか?それとも、あの日ふと見せた様な憂いをまた双眸に宿すのだろうか? 私は、君を愛していたにもかかわらず、君が私を思うがゆえに発した警句を時には笑い、時には罵倒して退けた。それは一重に、君の優しさに甘えていたゆえかもしれない。 いずれにせよ、君の思慮深い危惧は的中した。 私は己の過ちを修正すべくこの記録を残す。 それによって、私の負うであろう汚名は恐れるべき物では無い。 それよりも、その結果によって訪れるであろう人々の覚醒と為政者達の気付きに期待したい。
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