第一幕 ~桜の園~

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官舎を出ると、外にはパーソナル・コミューターが待っていた。 傍らには長身の若者、 局所有のアンドロイト。SA-4423、エリナの相棒兼護衛兼監視役だ。 「おはよう御座います、副保安官」 豊かなブロンドヘアーをなびかせ、アイスブルーの瞳を伏せて一礼しつつSA-4423はドアを開ける。 彼女が乗り込むと、滑るように走り出した。 路面から電力を供給されるの超伝導モーターが動力源なので音も振動もない。 閉じようとするまぶたに抗いエリナは相棒に話し掛けた。 「ねぇ、最新のニュースレター、インストールしてよ」 「ご自宅で取られないんですか?」 「局で手に入るから家では取らないの、あれのサービス料もバカにならないのよ、シングル・マザーの地方公務員は大変なの」 「失礼しました」との詫びの後、シートを通じて彼女のInPNTにニュースが入る。 『UU(ユーラシア連合)の穀物輸入代金支払いモラトリアムに対し、MS0(火星自治機構)、SC(太陽系共同体)行政裁判所に提訴準備』 『ヘラス州プロメテ高原の大規模農場における違法労働摘発、「機械を使うより人間を使うほうが安上がり」と嘯く農園主に対し捜査官「23世紀の奴隷制度だ」と怒りを露にする』 『テラ・フォーミング完了10周年式典阻止を宣言したテロ組織、「穀物生産開始70周年記念式典も無事では済まさない」』
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