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ホー。
ホー。
梟に似た鳴き声が、河辺をこだましている。
「本当に、戻れるかなぁ…」
沙和がふと不安を口にしたのを聞いて、ユラシルはにっこり笑った。
「もうすぐわかるさ」
水面に、月や星の光が映っている。
「こっちの世界も、空の景色はキレイですね」
「あぁ。ディズも、夜空には月や星が見えるんだろう?」
「はい。私達の地元は田舎なので、もう満天の星空が見られますよ!」
そう言って、いつもあのアーケード街から、三人で見上げた空を思い出す。
「…ユラシルさん」
そう呼ばれて振り向くと、斗哉が頭を下げた。
「色々、生意気な口聞いて、すいませんでした」
「はははは!気にすることはないよ!君の行動は正しい。見知らぬ土地で、見知らぬ人間を無条件に信用するのは、危険過ぎる。少しぐらい疑ってかかるのが丁度いいのさ。君は、しっかりした子だ。あの二人を引っ張って行かないとなぁ」
斗哉の肩をポンポン、と叩いた。
「さぁ、そろそろ、歪みが現れる時間…」
そう言いかけた時だった。
木陰で、ザザッと音がした。
ユラシルが敏感に察知し、素早く振り向く。
「誰だ!?」
暗がりで見えにくいが、それは、同一色の服を着た人間。
グレーの集団であった。
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