第三章 帰還

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…どのくらい気を失っていたのだろうか。 身体の痛みで目を醒ますと、そこは見慣れた風景。 いつものアーケード街だった。 そう、俺達は帰還した。 元の世界、ディズへ。 頭がボーっとして、なかなか思考が戻ってこない… しかし、数メートル先に、俯せになって倒れている沙和の姿を発見し、ようやくその状況を理解した。 「沙和!おい!沙和!」 駆け寄り、沙和を揺り起こす。 「あ…斗哉くん…?あれ、僕…」 目覚めたばかりで、沙和も意識が朦朧としているようだった。 「戻ってきたんだよ、俺た…」 そう言い掛けて感じた違和感。 ハッとした。 香子がいない。 辺りを見回したが、香子の姿が何処にもない。 「香子…?」 呟くように呼ぶが、返事はない。 「香子ー!どこだよ!!」 今度は大声で叫んだが、静かなアーケード街に、虚しくこだましただけだった。
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