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結局、目新しい手掛りを掴むことはできず、斗哉は悶々とした気持ちで家路を辿った。
腹が立っていた。
香子を助けたいのに、身動きがとれない自分に。
そして、仲間に当たり散らしてしまった自分に。
「…大馬鹿だ。」
道ですれ違う人が振り返るのも気にせず、斗哉はぽつりと呟いた。
香子がこの世界にいないと確信した今…焦っているのは俺だけじゃない。
わかっているはずなのに…どうしてあんな言葉を発してしまったのか。
「俺は…ガキか!」
カコン!
道端の空き缶を蹴り飛ばした。
同じ考えを繰り返しては、自分を責める。
そうしている内に、いつの間にか見慣れた門と表札の前に辿り着いていた。
斗哉は溜め息だけついて、無言で玄関の重い扉を開いた。
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