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時刻は、もうすぐAM3:00をまわる。
ここは田舎町の寂れたアーケード街。
時間が時間だけに、辺りはしんと静まり帰っていて、先程から賑やかになり始めた高校生三人の声が響いている。
三人はいわゆる幼馴染みというやつで、昔から仲が良く、毎日のようにこうやって遅くまで時間を共有している。
最も、平日ならば翌朝の登校に備えて日付が変わる前には解散するのだが、明日は日曜日。
帰宅の時を気にすることなく遊んでいたら、あっという間にこんな時間だ。
「ふぁぁ。僕そろそろ眠くなってきたっポイや……」
「こんな時間だもんな。誰かさんの馬鹿に付き合ってたら時間経つの早いよ」
「馬鹿でスイマセンねっ!」
香子が頬を膨らませる。
「お前の馬鹿に付き合うのが楽しいってことだよ」
「えっ……」
時々、斗哉は優しい言葉を口にする。その度に、香子は顔を赤くし動揺する。
何故か、沙和も一緒に顔を赤くしている。
「はは、面白っ」
斗哉は人懐っこい顔で笑う。実は香子は、そんな斗哉の笑顔が好きだったりするのだ。
「ヨイショっと、」
沙和はまだ少し赤い顔を冷ますために、道端に並ぶガードレールで跳び箱を始めた。
男にしてはかなり華奢で身軽な体が、ひょいっと浮き上がる。五、六個をテンポ良く跳び越えたところで、元いた位置を振り返る。
「沙和ぁ!」
向こう側で香子がひらひらと手を振った。
沙和も手を振り返す。
さて、折り返そうか。
そう思った瞬間……
沙和は視界に入った店のショーウィンドウが、何かおかしいことに気が付いた。
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