第一章 現れた、歪み

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「何だろ、これ……?」 沙和は、そこから目が離せずに、しばらく立ち尽くしていた。 斗哉と香子がその姿に気が付き、駆け寄ってきた。 「沙和?ど……」 どうしたの、と言いかけて、香子は息をのんだ。 こんな夜中で、真っ暗なはずのショーウィンドウ。 しかし、そのガラスの一部分に、異様な緑色の光が浮かんでいた。 波のようにユラユラとうねり、そこが盛り上がったかと思うと、また沈む。 それはまるで、手招きをしているかのようにもみえた。 三人はしばらくただそれに魅入っていたが、ようやく斗哉が口を開いた。 「どうなってんだ……?」 大きなガラスにわずか二十センチ四方だが、それは古いCGのように不自然で、存在感がある。 斗哉は辺りを見回したが、そこ以外には何も変化はない。 意を決したように、近付く。 「と、斗哉!やめなよ……なんか……怖い……」 香子は制止したが、 「ちょっとだけだよ」 と、今度は沙和が手を伸ばした。 それと、沙和の指先が触れた瞬間…… ブワッ!!!! 「!!」 声を上げるよりも先に、緑色の光が目前に広がって全てを覆いつくし、三人を飲み込んでしまった。 そして、元の暗いショーウィンドウに戻っていく。 まるで、何事もなかったかのように。 アーケード街に、ひゅる、と風が吹いた。
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