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「何だろ、これ……?」
沙和は、そこから目が離せずに、しばらく立ち尽くしていた。
斗哉と香子がその姿に気が付き、駆け寄ってきた。
「沙和?ど……」
どうしたの、と言いかけて、香子は息をのんだ。
こんな夜中で、真っ暗なはずのショーウィンドウ。
しかし、そのガラスの一部分に、異様な緑色の光が浮かんでいた。
波のようにユラユラとうねり、そこが盛り上がったかと思うと、また沈む。
それはまるで、手招きをしているかのようにもみえた。
三人はしばらくただそれに魅入っていたが、ようやく斗哉が口を開いた。
「どうなってんだ……?」
大きなガラスにわずか二十センチ四方だが、それは古いCGのように不自然で、存在感がある。
斗哉は辺りを見回したが、そこ以外には何も変化はない。
意を決したように、近付く。
「と、斗哉!やめなよ……なんか……怖い……」
香子は制止したが、
「ちょっとだけだよ」
と、今度は沙和が手を伸ばした。
それと、沙和の指先が触れた瞬間……
ブワッ!!!!
「!!」
声を上げるよりも先に、緑色の光が目前に広がって全てを覆いつくし、三人を飲み込んでしまった。
そして、元の暗いショーウィンドウに戻っていく。
まるで、何事もなかったかのように。
アーケード街に、ひゅる、と風が吹いた。
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