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それからの記憶は曖昧だ。
どことなく遠い音にも感じられた授業終了のチャイムに私は我に返り、覚束ない足取りで教室に戻った。
不思議と吐き気は収まったが、胸の奥には妙な喪失感と焦燥感が燻って居た。
目眩が、する。
教室に入った途端、友人が二人寄ってきて大丈夫なのかと尋ねてきた。どうやら私の顔は相当青白くなっているらしい。
やせ我慢で大丈夫だ、と云おうとした刹那、足元が崩れた。立つ力を失った足に続いて私もその場に崩れ落ちる。
友人の一人が驚いて小さくも声を荒げたせいで、教室がざわめく。
嗚呼、五月蝿い。
そんなに騒がれちゃ、頭が痛い。
保健室にでも運ぶ気か、側に居た男子が私の腕を自らの肩に回させて私を抱え起こす。
保健室で休んできてこの様だと云うのを理解出来ないのか。
私に触れるな、酷く不愉快だ。
再び吐き気がする。
振り払いたいのに、四肢が震えて成すが侭に立ち上がらせられる。
友人達に加え、普段は言葉も交わさない様な同級生までもが大丈夫かと声をかけてくる。
こんな姿を見て置いて、何故大丈夫では無いと汲めないんだ。
ざわめきが酷く五月蝿い。
騒ぐな、疎ましい。
頭が痛い。
首になれば、首にさえなれば、大人しくなってくれるのだろうか?
この喪失と苛立ちを、癒やしてくれるのだろうか?
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