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桜を探してひたすらに荒れ地を歩き続け、気付けば一夜を越えて明け方になろうとしていた。
初春の肌寒さの中でも、私の首筋には薄らと汗が滲んでいる。重いとは感じない。この至福を、どうしてそんな苦痛を孕んだ感覚と間違えようか。寧ろ高揚に似た浮遊感を感じるくらいだ。
夜に浮かぶ桜を堪能したならば、次こそは貴方と永久に一つになれる気がする。暗い夜の闇は私で、その中で咲く優しい色をした桜は貴方の様だ。
桜の木を見つけられたなら、その下で貴方を抱いて私も眠ろう。何にも邪魔される事無く貴方と安寧を迎えられるのなら、私に取ってそれ以上の幸せは無い。
柔らかい貴方の頬を撫でる。其れだけで脚の疲れも消えてしまいそうだ。
首を掻き抱いて貴方の頭に顔を埋める。貴方の香が鼻腔に甘く染み渡った。心地良さに頭がくらくらする。
唇を擽る髪を指先に絡めて戯れる。
喩え此の指が貴方のその鋭利な髪に寄って切り裂かれても本望だと思った。
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