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何時の間にか腕の中の貴方は骨だけと化していた。少しざらついた感触が掌にくすぐったかった。
土の中から貴方を連れ出してからどれだけ経過したのか。桜の季節は終わってしまったのだとしたらどうしようか。
日光が私の項を焼く。額から滲んだ汗が顎を伝い首筋を落ちて行く。
せめて、貴方だけは焼かれない様に、腕の中の髑髏を強く抱き締めた。
肉が剥がれて最初の頃より軽くなってしまった貴方は、この腕の力を強めれば砕けてしまいそうな程脆く見えた。
ふと、寂しくなる。
この侭、私を置いて貴方が消滅してしまったら残された私はどうすれば良いのだろう。
日毎に肉(虚勢)が腐り落ちて骨(本質)が露わになる貴方を見て、それを喜んだのは他ならぬ私だ。
しかし。
もしかしたら、私は貴方の上辺しか見ていなかったのでは無いか?
こうして全てを露わにした姿を望んだ筈なのに、それが叶った今、私は恐れている。何に、かは判らない。
何らかの糸が切れたかの様に、体が崩れ落ちる。
急に、疲れた。
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