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「この世の中ですからねぇ……、大変でしょう?ハンターの仕事は」
「そんなものはどの仕事だって変わらないさ。商人業だって、大変だろ?」
「そうですねぇ……儲かるっちゃ儲かるんですがね」
あははと苦笑い気味に微笑んで頭を掻くラルゴ。
案外憎めない奴だ。
「何かあれば、遠慮なく言って下さいね!協力は惜しみませんよ」
「あぁ……ありがとう」
我々と、それに属する者……双方は常に協力体制にある。
俺とラルゴの様な位置関係も、その形に当てはまる。
ハンターと商人。
商人はハンターへの物資援助、ハンターは商人の旅を守り場合によっては目的地まで護衛をする……そういった話だ。
そもそも、大昔の出来事に未だに振り回されていると言うのは、馬鹿馬鹿しい話なのだが……。
「そう言えば、私“ボルムヘンツの聖戦”の話、ちゃんと聞いた事無いんですよね……」
ラルゴがふとそんな事を言った。
「そうなのか?……“ボルムヘンツの聖戦”……か」
『ボルムヘンツの聖戦』
全ての始まりとなった3000年前の話である。
この神話の事件が起きなければ……今の世の中はなかっただろう。
光を司る女神と、闇を司る邪神。
対立する神と神。
双方が起こした争いと、それによって生み出され後の世に残された邪悪の欠片。
欠片は次の悲劇を生み出す……。
形として……我々は、神々の戦いに巻き込まれていると言っても過言では無いのだ。
「話してやろうか……、“ボルムヘンツの聖戦”の話」
「ホントですか?是非お願いしますよ!」
嬉しそうにこちらを向くラルゴ。
話に興味があるのは分かったが、出来れば手綱を手放さないで頂きたいものだ……。
「ラルゴ、話はしてやるから手綱を放すな……」
「へ?……あっ……ぉああ!」
妙な声を出しながら、慌てて手綱を握り手元へと手繰り寄せるラルゴ。
馬もいきなり綱がゆるんだり突っ張ったりで、ビックリしてるんだろうなぁ……。
「ふぅ……。ところでプロトの旦那……、ボルムヘンツって確か女神の塔がある……」
「あぁ……、そうだ。まぁ、順を追って説明してやる」
「“ボルムヘンツの聖戦”。それは、今から3000年前……世界がまだ大きな大陸一つしか無かった頃の話だ……――
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