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――……数千年前、世界は一つだった。
大きな大陸一つだけ。
創世主である女神アルシアの統率の下、民族の違いも気にせず全ての人が平和に暮らしていた。
そう、奴が現れるまでは……。
ある日、一人の心悪しき魔術師が邪悪なる魂達を引き連れ、何人も立ち入る事の禁止されている女神アルシアの住まう塔へと乗り込んだ。
魔術師は塔に潜んでいた精霊や動物達を虐殺し、女神アルシアの怒りを買った。
女神アルシアは世界全土の精霊達を集め魔術師の邪悪な軍団に立ち向かった。
戦いは二ヶ月と20日、計七回にも及び最後の総力戦となった場所がボルムヘンツ……女神の塔が在る場所であった。
この戦いが後の世の、“ボルムヘンツの聖戦”と呼ばれるものである。
戦争の傷痕は世界全土に及び……遂に大陸は七つに分かれてしまう。
大小様々な形の大陸はボルムヘンツ属するレンテべル大陸を中心に東西南北に離れてしまい、民族間の交流は途絶えそれぞれの進化を遂げた。
魔術師は死の直前、自分の身体を生け贄にし邪神オルテガをこの世へと呼び出した。
闇の化身が現れた事による混乱を避けるべく、女神アルシアは今一度統率者を名乗る。
しかし、邪神オルテガもまた世界を統率すべきは自分であるとした。
突如として二人になった統率者の存在に、世界中が困惑。
どちらを統率者と認めるかに注意が注がれ始めた。
女神アルシアは、自分を統率者と認める者に「銀貨」を授けた。
アルシアの姿と豊穣を願う麦の絵が彫られた輝かしい銀色の硬貨である。
「銀貨」には女神アルシアの魔力が宿り、有する者に幸福を与えた。
それに対し邪神オルテガは自分を統率者と認める者に、自分の有する凶悪な魔力の一部を与えた。
邪悪なる黒き力である。
やがて統率者争いは、民族同士の紛争をも引き起こしたのだった。
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