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その後も、彼女はハンカチを体に巻き付けたまま、休む事無く、喋り通した。 相手が自分を食べようとしていた事さえ忘れたような親しい喋り方に、こっちもいつしか引き込まれるようになる。 しかし、段々と彼女に元気が無くなっていくのは僕の目にもはっきりと映っていた。 弱々しく笑う彼女の笑顔には痛々しささえ感じるようになっていった。 ラップをかけたり、冷蔵庫に入れてみたりと子供じみた策を講じてみる。 僕はいたって真剣だった。 しかし、どれも今ひとつ効果がなかった。 そして… バイトから帰ってきたある日、彼女は消えていた。 腐りそうな卵だけ遺して。 最初からその場に居なかったように。 その日から、部屋は静かになった。 僕も相当落ち込んでいたのだろう。 食事を摂らずに次の夕方までぼっーとしていた。 いい加減、買い物に行かなきゃ。 鈍った足を叩いて、スーパーへ向かう。 卵売り場に来て、ふと足をとめた。 何やら話し声が聞こえる。 「あいつったら、人の事を割っておいて…まだ名前も聞いてなかったし…ぐだぐだ」 かなり大きな声なのに、誰も振り返らない。 僕は飛び付くように近づくと、どれが喋る卵か見極めようとする。 すると、一番近くのたまごパックのひとつから声を聞いた。 「やっと…来たか。」 彼女の笑顔が目に浮かぶようだ。 僕はそのパックを手に取ると、一直線にレジに向かった。 帰り道、 「また君の卵、割ってみていい?」 僕は聞く。 「考えとく」 思ったよりも優しい返事が帰ってきた。 END
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